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各種事業関連資料

イギリス・イタリアの困窮者の自立の取り組みに学ぶ!

■ バンカ・ポポラーレ・エティカ
バンカ・ポポラーレ・エティカ
バンカ・ポポラーレ・エティカ
 最後が、イタリアに何しに行ったかというと、これだけのために行ったようなものですが、「バンカ・ポポラーレ・エティカ」です。「ポポラーレ」というと大衆(人民)です。「バンカー」は銀行、「エティカ」は道徳・倫理ですね。「大衆のための倫理銀行」というような意味です。私は、何しに行ったかいうと、生活保護費500億円の西成で、この500億円で金儲けできないかと思って、要するにコミュニティービジネスを育てることができないかと考えています。みなご飯食べて寝るけれど、食券で食べてくれるようにしたらコミュニティービジネスが育つと思います。今、何が求められているのかというと、西成には2万2千人の生活保護受給者がいて、7人に1人の割合です。その人達の食生活というのが、全部アウトサイダーによって持っていかれている。ときには千円札、2千円札握って博打に行き、やくざに持っていかれていることに対して、地域に還元する仕組みにする。そうすると、先程言っていた媒介的労働市場会社とか、ソーシャル・ファームとかいうのが育つのではないかなと思います。それをするには、どうしてもコミュニティービジネスを育てるには、コミュニティバンクが必要です。つまり、今やらなければならないことを、お金貯めてゆっくりして将来やろか言うてたら20年後になるわけです。今やらなければならないことがわかっても、お金がない。やはり気になるのは資金調達能力です。資金調達にどのような方法があるんだろうなと考えていたら、イタリアにはそういう銀行があるらしいということを、大阪市立大学の先生から聞いたものですから、慌てて、これを見に行こうということになったわけです。
 社会的な目的を持つ組織やプロジェクトに資金提供を行う銀行。井筒監督の儲けない銀行、労働金庫、あれとは少し違いますが。儲けない銀行というか、社会的な目的を持つ組織への資金提供を行う銀行です。協同組合の中にもともと「マグ」といったかな、金貸し屋、頼母子講、協同組合はいっぱいあるわけで、当然のように金の廻し合いをします。「金貸しといてくれや。給料払われへんのや」といったことが、たぶんあったと思います。「貸しとったる。貸しとったる。ほんで返すんかなぁ?」そして、「最後はどうなるんやろ。協同組合やもんな。皆の責任やもんなぁ。債務もうえんちゃう」というようになっているのと違うかな、誰が最後責任取っているのかなと思います。
社会的な目的を持つ組織やプロジェクトに資金提供を行う銀行
社会的な目的を持つ組織やプロジェクトに資金提供を行う銀行
 そういう中から金が集まり過ぎて、要するにややこしい金が集まってくると治安上問題であり、きちんと管理しないといけないということになる。法に基づかないと保険とか加入できないし、自分の家のタンスに隠すわけにもいかんし、泥棒されたらあかんから保険に入るとかします。
 というようなことで、きちんとした銀行になろうかということで、「バンカ・ポポラーレ・エティカ」ができました。1999年ですから最近ですね。イタリアのパドヴァ市でできて、10支店140名が働いており、組合員は2万6千人、うち個人が2万3千人、会社が3千です。あとで聞いたらことですが、ここの社長?いわゆる頭取は、週3日バイトしているということで、それくらい経営は厳しいのだろうと思いました。そんなに、いいものではありません。いいものではないところが、やってやれそうな気がする、このあたりが魅力ですよね。
 社会的な目的、組織に優先的に貸して、融資先の名前を明かしています。誰に貸したか、ばれているわけです。やはり融資先は選ぶという感じで、面倒くさい事をしますね。260くらいの班があるんです。協同組合の「バンカ・エティカ」という銀行ですから、26,000の組合員がいて、23,000人の個人と、3,000が企業です。これが地域ごとに班分けされ、支部ができているわけです。融資を受けるためには、この支部にプレゼンテーションしに行くわけです。例えば、Aさんという人が、「こういうことで金貸して欲しい」と言って、まず支部に行きます。融資先決定の第一段階は、経済的審査ではなく、社会的審査、モチベーションです。要するに、「何のためにやるの?」という審査をします。「何のためにやるの?」ということを支部の大会で承認されなければならない。うちの同和金融公社は、どうやって作ったかといいますと、○○町のBさんという人に金を貸し、Cさんが金借りに行くとしますと、そのときにBさんが金を返していないと、Cさんは貸してもらえません。村の共同責任みたいな、そういうやり方でやってきたのです。「相互連帯保証制度」といって、イタリアはたぶん「地域的相互連帯保証制度」ということで、決定権が地域にあります。責任も地域にあるんですね。「おまえが決めたんやから、おまえが責任取らなあかんで。催促して取り戻さんかい。そうせえへんかったら、おまえんとこの支部解散じゃ…」というようなことをやっているのです。たぶん、イタリアの人達は永いことそこ住んでいて、そうでなければできないことです。これは、移動人口が多いところではできないし、田舎ではできるでしょう。茨木市くらいではできるかもしれないが、西成では難しい。
融資先は選ぶ
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 地域に決定権を持たせて第一次審査を行い、いわば予選を突破して決勝戦に残ると経済審査をします。経済審査ではなかなか落としません。年間1,500件の地域から申込があって、経済審査で落とされることは、ほとんどないということです。
 私は、銀行の大事な機能は、金を貸さんために銀行があるのか、金を貸すために銀行があるのかいうと、基本的には貸さないといけないと思います。だから事業審査とは、○(マル)を付けるために事業審査するのであって、×(バツ)を付けるために事業審査するわけと違う、こういう考え方なんですね。ですから、○ を付けるために「何でもええ」と言うのではなく、○を付けるために「書き直して来い」ということをやっているんだと思います。大事なことは、「金を貸すために銀行はあるんでしょう」ということと、「地域の信頼を得て、地域の責任を負っといで…」と。言うは簡単ですけど難しいですね。私も西成に銀行をつくろうと思っていますが、言うは簡単やけど出来るかな?。やはり、住民の中で差別するしかないですね。あなたはこの町に何年住んでいるかの「居住歴」とか、社会運動の「経験歴」で組合員にするとかしないと、通行人も含めて「金かしてくれ」と言われたら、困ってしまう。難しいと思いながら考えていましたが、特に社会的活動に対する非常に高い価値観で判断しますということです。ただ、金を借りることに関する決定をするということと、金を貸すことに責任を負うということでは、近畿大の奥田先生がいつもこういう言い方するのですが、町の経営というか、町の経営の、今考えられる最高形態、つまり金を貸す相手を自分たちが決定できることはすばらしいことです。同時に一番厳しいことです。責任を負うことは、格好いいけど、つらいことです。これが街づくりの一番のところかなと思います。西成では、うちの書記長とかを中心に生活保護改革の提案について検討しています。生活保護は、“減らすより生かす”という観点で、5百億円のお金が地域に還元できる仕組みにして欲しい。そのためには、この仕組みを地域に作らせて欲しい。うちの名前では社会的信用が薄いので、社協くらいどうでしょうと言うてます。そして、社協という機関のバックに銀行を作ろうと言うてます。もしできるなら、生活保護の5百億円が還流するシステムであれば、ずいぶん変わるなと思います。たぶん、うまく表現できないのですが、「この町にあったらいいな」というものは、人間が住み続ける限り絶えることがないニーズなんですね。「幸せになりたいな」と思っている限り、「こんなんあったらいいな、あんなんあったらいいな」と考え付く。「こんなんあったらええな、あんなんあったらええな」ということのために税金を払い、人々はボランティアをする、こういうことですね。そして、「こんなんあったらええな、あんなんあったらええな」ということのために人々はフル就業、つまりすべての人々が、「あったらええな」に参加する。そのときに税金で参加する人や、ボランティアで参加する人や、働くことの復権と言う形で参加する人達もいる。この構図をどうやって作っていくのかというのが大事ですね。それを促進するのが「金」です。お金を今まで動かしていたのは基本的には「役所」で、もう一つは「市場」です。でも、さらにもう一つ、「The another way」、別の道があるのではないかというのが、この方法だと思います。
 バンカ・エティカでは、利息がゼロ、もう利息取らなくてもよいのがあります。利息を取らなくてもよいというだけでも随分違うと思う。利息は安い方がお金を返す率が高く、利息が高いほどお金は返さなくなると思います。これは銀行の内部です。職員が140人くらい働いています。預金高が6百億円か、7百億円です。そのうちの500億円くらいを融資に回しています。
 我々は何のために、このようなところに行ったのかと言いますと、日本型CAN設立研究会いうのを作り、住谷さんという環境省の事務次官を座長にして、ネットワークは全国、フィールドは西成で、「釜ヶ崎の再生」をテーマに掲げ、今日お話したような方法でイギリス型のことを学びながらやっています。これまでに、釜が崎支援機構と株式会社がJV(共同体)を組んで住吉公園と住之江公園の指定管理者に無事合格し、そこでホームレスの就労支援に取り組んでいます。「公園で寝ている人」から「公園で働く人」へ、というようなことをやっています。それからもう一つのテーマは、古着リサイクルです。もともと古着いうのは、同和地区の部落産業というか、同和地区の人が非常に多く関係し、いわゆる「ボロ屋」と言われていたのです。また釜ヶ崎は、古着を売るフリーマーケットの発祥の地でもあり、親和性があります。そうした親和性のある産業でまちづくりができないか、ホームレスの就労支援に繋げられないか、プロジェクトを作っているところです。
 ここで、関係する2つの本をご紹介しますが、「ソーシャルインクルージョンと社会起業の役割?地域福祉計画促進のために」、この本が一番わかりやすいと思います。それから、「ソーシャル・エンタープライズ?社会的企業の台頭」です。C-STEPの講演にもお招きした谷本寛治さんの著書で、わかりやすい内容ですが、難しいです。非常に見事にまとめてありますが、理解するのにはかなり時間かかります。というのは、エンタープライズの発想がないままで、「エンタープライズ」が言われており、読んでいて解らなくなります。ですから、絵を描きながら読まないと理解できないかもしれませんが、繰り返し読むといいのではないかと思います。
参考文献
参考文献
 以上、大変長くなりましたが、イギリスの媒介的労働市場会社とソーシャル・ファームで就職困難者や障害者雇用に新たな道はあるのか、ということが日本で言われたテーマでありますが、私が思ったことは、「就労支援」というのは世の中にはない、「職業訓練」というのも世の中にはない、ということです。トータルな支援でなければならない。全人的復権という観点でないと、「働く」ということだけを取り出して、あれこれやっても、生活はあるし、さまざまなものがあるわけです。これが全体としてわからないと、「どう支援するか」という中身は出てこない。
 もう一つは、我々の就労支援は、「働くところを頂戴」と言っているような気がするのです。つまり、こちら側のことばっかり言って、少しきつい言葉で言うと、障害者とか、ホームレスとか、就職困難者とかの方が、エゴイスティックだと思うのですね。「私働きたいの…」とだけ言っている。そうではなくて、「こんなんあったらいいな」とか、「こうしたらいいな」という、まちづくりの考え方を持たなければ、自分の働く意義を見つけることは難しいと思ったのです。「何のために働くのか」ということを、あまりにも一方通行で、人任せにしすぎて、「職安に行ったら仕事が見つかる」という仕組みを変えないと、なかなかうまくいかないのではないかなと思います。
 現在、サッチャーの改革と同じようなことが進んで、社会福祉法人の職員さんたちは、「授産施設が潰れる」、「障害者の授産施設はやっていけなくなる」と言っています。私も「こんなの悪法や」と言いますが、「悪法や」言ってても、現実には進んでいく。そういうときに、社会福祉法人自身が思い切った発想の転換をしなければならない。そのときは、オーガニゼーション、組織ということについて興味を持たないといけません。社会福祉法人がNPOを持つ、社会福祉法人が株式会社を持つ、社会福祉法人がソーシャル・エンタープライズを持つ、というような発想を持たないといけない。そのときに大切なことは、市場も見えないし、「こんな世の中になりたいなあ」ということを持たないソーシャルワーク、就労支援は、「我が儘である」ということに気付いたのです。例えば、「やはりこんな世の中にしたい」、「こんなふうになりたい」、つまり、「町をきれいにしたい」とか、「憩える場所にしたい」とか、「だから、私はこういう就労訓練をして、こう働きたい」とか、そういったモチベーションを持たないと、就労支援になかなか届かないのではないかということです。それと、先程申し上げましたように、「訓練」という言葉に代表される、「ダメな子を連れ出して育てる」というような、昔の「促進学級」、「補充学級」みたいな考え方で職業訓練をやっている限り、永遠に長期失業化するのではないか、後、残っているのは「生命線抜くだけ」と違うかなと思います。今までイギリスも生命線抜くようなことをしたのです。つまり、長期失業のために失業手当を短くする、あるいは額を減らす、ということをしました。
 日本でも、いろいろこういう問題は起きています。生活保護の水際作戦、額を落とすなど、生命線を切る、抜くというやり方や、そして脅して「働け、働け」とかいうことが起きています。しかし、それは今の失業者より多い、「関係失業者」というか、いわゆる能力失業という「関係失業」が多い人、「人間関係失業者」というものを作ってしまうのではないか、ということから、イギリスに行って私が思ったことは、社会全体を見た就労支援?何のために働くのか、どうやって働くのか?というようなことが大事であるということです。ヨーロッパでは「完全雇用からフル就業へ」という言葉、言い方があります。「完全雇用」と言うのは閉鎖性、つまり稼動年齢層が定年まで、一日8時間働き続けることを「完全雇用」と言ってきましたが、どのような人も、「フル=すべての人」が就労するという、別の言葉で言うたら、「働きたくない人は、働かなくてもよい」という、つまり「無理して定年まで全うしよう」とか、「無理して8時間働く」という考え方は、むしろ体に悪い。でも、何歳になっても働き続けられるようにする。私は、最初、「何を言っているのかな」と思ったのですが、「永遠に幸せになりたいね?」と言っているような気がするのです。「永遠に幸せを追求しつづけよう、もっと幸せになれるはずや」ということで、仕事を見つけていくというか、そういう仕組みをやらないと、ワークシェアリングというのが、「分け合い」と映ってしまう。「幸せになり合う」というふうにならずに、「シェアリング」になってしまう。「もっと幸せになりたい」、だから「あなたここやってよ」、「あんたの特技いかしてよ」というみたいなことですね。ヨーロッパの中でもそうした考え方がずいぶんあります。ヨーロッパというのは論争の世界ですから、イギリスとフランスが論争するとか、イタリアが論争するということもあります。それから共有の社会ですから、どこかが失敗したら、すぐわかる。それから欧州社会銀行で助け合いまでやっていますから、やはり困難に対する捉え方が、非常に広いということがあり、それは大変勉強になりました。
 我々が結論的に申し上げるとしますと、小さく始めて大きく広げるとか、フランチャイズにするとか、あるいは媒介的労働市場会社とかを取り入れるということで、C-STEPなどの新しい方向性とか、道順になればいいなと思います。それから部落解放運動にもブロムリーバイボウとか、あのような経験を通して、本当に社会的な運動とか、社会的な事業の役割が過小評価されて、飽きられていく過程ですね。それをリフレッシュしないと、「イギリスのようになってしまいますよ。あるいはイギリスのようにがんばりましょうね」というようなことを含めて、視察をまとめたつもりです。近いうちに、是非少し資料等も付けて、読み物みたいにしていきたいと思っています。どうも有り難うございました。

(報告了)

1.イギリス視察
 ■ ブロムリーバイボウセンター
 ■ グリーンワークス&ファーストフルーツ
 ■ コイン・ストリート・コミュニティー・ビルダーズ
 ■ ソーシャル・ファームUK
2.イタリア視察
 ■ バーチャル・コープ
 ■ ピアッツア・グランデ
 ■ コーパップス
 ■ バンカ・ポポラーレ・エティカ
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