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各種事業関連資料

イギリス・イタリアの困窮者の自立の取り組みに学ぶ!

1.イギリス視察
 イギリスの場合、サッチャー政権の見方ということがあります。こういうことを言うと政治的ですが、ポスト小泉さん、安倍さんの後に何ができるのかなあという気が非常にするのですね。何か目の前の改革は、「昨日に変わらぬ今日がある、今日に変わらぬ明日がある」というような連続性ですけれど、外国の、他人の経験というのは、“なんてことをするんや”というふうに見えても、目の前の改革は、「昨日に変わらぬ今日がある、今日に変わらぬ明日がある」という、ゆっくりしたテンポなわけです。そして終わってみたら、ファシズムがやってきてた?ということがあるのです。木下順二さんが書いていたことですけれども。
 イギリスのサッチャー政権がもたらした結果、サッチャーのやり方に似ているやり方ということでは、改正介護保険法、それに、一番似ているのが障害者自立支援法、これは本当によく似ています。いつの間にか「自立」という言葉より「自己責任」という言葉が大変注目されています。最近、いろいろな人が、「“自立”という言葉を少し疑わないとダメよ」という言い方をしてきていますが、それくらいにしきましょう。
サッチャー政権
サッチャー政権
 そしてブレアが出てきて、「自立」に対して「ソーシャル・インクルージョン(包摂)」という言葉を使い始めたのですね。そして、このPPPやPFIなんていうのはサッチャーが始めたことで、この前安倍さんが言われていましたが、「ブレアはサッチャーの子よ」と。要するに、ブレアとサッチャーは違わないというか、「サッチャー路線よ」と言っていました。その2番目の「公民パートナーシップの推進」のところなど、特にサッチャー路線を引き継いでいるように見える面だと思います。
 しかし、私が実際に行ってみて、ちょっと違うなと思ったのは、イギリスは何もサッチャーだけでやっているわけではない。反対派がいたという意味では、確かにサッチャー路線は引き継いでいるかもしれない。それから「積極的雇用施策」というのは、これは今日の研究会の本当のテーマですが、積極的雇用政策といってもなかなか見つからない。私もまだよくわからないのですが、ここで「訓練」という言葉に替わる日本語を見つけたら、かなり近づいたことになると思うのです。「訓練」という言葉が、非常に違うなというのをイギリスの人たちも感じていて、随分さまざまな試みをしているのですが、その適切な言葉がないのです。ですから、日本語で、ここにも「訓練」と書いてありますが、あるいは「自立の促進」と書いていますけれど、積極的雇用政策は「訓練」でもなければ、「自立の促進」でもないと思いますね。何だろうというのがわからなくて、これを掴みに行くことが、我々の課題なのかなと思いました。ブレアの「第三の道」ということです。それからここに到るまでに、ソーシャル・エンタープライズ、ソーシャル・ファームを探そうと見なければいけない。いろいろな人の話を聞いていても、政府の限界、チャリティーの限界、ボランティアの限界ということをイギリスではいっています。つまり、政府の限界は日本と一緒です。政府の力では、公の力では、解決できない社会問題を惹起しました。あるいは、公だからこそ見失う社会問題が生まれた、ということですね。
ブレアの「第三の道」
ブレアの「第三の道」
ソーシャル・エンタープライズ、ソーシャル・ファーム
ソーシャル・エンタープライズ、ソーシャル・ファーム
 例えば、ヨーロッパでは、障害者問題は圧倒的に精神障害者問題に取り組む人が多い。ヨーロッパのボランティアで、“一番進歩的”といわれているのが精神障害のボランティアなんですね。それくらい取り組んでいます。公ではなかなかできないこと、公だからこそ出来ないことが出てきた。日本でも介護保険、高齢化がこれだけ進んだら、公だけで、措置だけでは、介護保険は出来なくなってきた。それからホームレスの問題やニートの問題、公だから出来ないという問題も逆に出てきたということができます。
 それにもう一つ忘れてならないのは、「チャリティーの危機」と、ここにも書いていますが、チャリティーの危機をやはり自覚しているのですね。チャリティーの危機というのは、日本でいうと社会福祉法人の危機、公益法人の危機ですね。一言で言うと、チャリティーが官僚化している。目線つまり日本で今、社会福祉法人で「誰を雇うか」というと、一つは行政のOBで結構「施設長」とかに入るパターンが多いですね。これはどちらかというと、行政のOB、失礼な言い方ですけれど、行政のOBをのほうが、行政との関係がスムーズに行くということと、能力的にも高いということ、それは能力的には高いというところもあるけれど、失礼なことがないようにしますけれど、一面だけで言えば、行政との関係がうまくいくからという理由です。それから何々銀行出身の人とか、社会福祉法人の役員になっている人もいますが、これは民間人の専門性ですね。イギリスの「チャリティーの危機」といわれているのは、官僚化と専門家です。つまり、あまりにも「行政の下請け」べったりになっている。それから極度に市場主義というか、民営化に走って、そもそものミッション(使命)を忘れているというか、ミッションから遠ざかっている、という傾向にあります。行政の下請け機関になったり、ミッションを置き忘れたりするような傾向になっています。あとで「ブロムリーバイボウ」が出てきますけれど、国民の間では、「チャリティー」というところは、議論だけで何もしないところ…というレッテルを張られているのです。
 それで、イギリスの社会を考えてください。日本でいう社会福祉法人ほど、「ひ弱」ではないですよ。イギリスにおけるチャリティーは、どでかい制度であり、「チャリティー」という言葉を知らない人はいないくらい、大きな力を持っている。このチャリティーが危機に陥っていて、「The another way」?他に方法はないのかということで、試みられてきたのが「ソーシャル・エンタープライズ」という考え方、つまり「社会的企業」という社会的な目的を持ったビジネスです。事業で得られた利益は、株主の利益を最大化するためではなく、社会的な目的のために再投資される。要するに、儲けたお金は、給料に変えないよ、株主に配当しないよ、ビジネスに再投資するよ、ということです。
 日本の社会福祉法人も一応、形はそうなっておりますけれど、株式会社の名前で、後で紹介しますが、「ソーシャル・エンタープライズ」という民間のビジネス手法の中に問題を持ち込んだということです。これは例えば、理念として強く感じたのは、ビジネスマンをどう捉えるのかということです。日頃から私がよく言っていることは、社会問題は社会発展の“足かせ”の「かせ」だけども、社会運動は社会発展の糧で、「かせ」と「かて(糧)」とよく掛けて言っていたことです。つまりホームレス問題とか、部落差別というのは社会発展を妨げるものだけれど、しかし、それに取り組む活動というのは、社会を発展させる「かて(糧)」になる?私はこういう言い方をしていたのですが、チャリティーからは出てこないし、社会福祉法人からは出てこない発想です。ところが、ビジネスマンはそれを言うのですね。つまり、「糧」にならないものに資本は投資しない。なるほど、こういう言い方があるのかと。私は、ビジネスマンは儲けるため…ということで、ずいぶん誤解していたみたいで、そもそも発展の糧にならないのであれば、「民は動かない」ということを非常に表している。それが、「ソーシャル・エンタープライズ」というものを引き出していく力になると思います。
 イギリスでもまだまだ議論があって、つまり経済の捉え方を「ミッション」と「ビジネス」とを、どう捉えるのかありますね。これを二極化すると法律や制度がなければ官も動かないし、富も動かない。部落問題や障害者問題でいうと、景気がいい会社はやるけれども、会社が下向きになったり、しんどくなったら、ちょっと脇に置いとく…社会問題に対する企業の取り組みというのは、そうなってしまうのです。それを一つの問題として捉えていくということでイギリスも悩んでおります。
 例えば、一人暮らし高齢者への消費サービスが、4人家族を平均の社会と考えている日本社会のサービスのあり方自体が、明らかに齟齬を来していることは誰でもわかっています。4人家族向けに作られているテレビの値段は、1人で見る人には高くつく。だから、テレビを購入するというシステム自身に問題があって、例えば4人でテレビを見る人は買って、1人で見る人はレンタルにするとか、いうふうなシステムにしなければ、たぶん1人暮らしの人はどうしても損をしますね。現在、卵1個買うよりも4個買った方が安いときがありますよね。つまり、1人暮らしのビジネスのマーケットは明らかに「ある」のですが、商品が開発されない。最近、コンビニというものが若い人を対象にしてみたら、これが一人暮らし高齢者にもヒットしはじめた。ところが、随分味は辛いし、高齢者が求めるものと少し違う。つまりマーケットが小さすぎて、ビジネスとしては非常にしんどいけれど、ミッションとしては、どうしてもやらないといけない。社会的な課題としては大切な課題であるわけで、その間をどう埋めていくのか、葛藤しているということですね。
 元に戻りますが、法や制度がなくても、儲からなくても、やらないといけない課題に向かって、法や制度と民が一つの課題としてやっていくということを、主として民間がリードしているのがイギリスだ…というふうに考えていただいたらいいと思います。主として民間というよりは、協同組合グループがリードしているのがイタリアだというふうに考えたらいいと思います。ですから、私が会ったイギリスの民間人、つまりサラリーマン、ビジネスマンは、なんともハイカラで、なんとも社会問題に熱心な人が多かったかと思います。
 それから行った目的のもう一つが、ソーシャル・ファームとの交流です。ソーシャル・ファームの日本語の訳を書いていませんが、ファームですから「社会会社、社会的会社」で、小規模です。「ソーシャル・エンタープライズ」と「ソーシャル・ファーム」は、どこが違うのですかと向こうの人に聞いたら、「ソーシャル・ファームは、ちっちゃいのよ」と言っていましたが、なるほどなと思いました。ソーシャル・ファームは障害者用のためで、少なくとも25%、4人に一人は障害者もしくは不利な立場の人でなければならない。しかし実際は、ほとんど違いはございません。私も最初、「障害者」アンド「不利な立場」と思っていたのですが、どうも実際は、「障害者の中に不利な立場がある」ということがわかったんです。例えば、発達障害を障害者と呼ぶかどうか、障害者手帳を持っていない人でも障害者よと。つまり障害者のラインをとらえているのであって、ホームレスを含むだとか、そういう意味で「あるいは」と言っているのではないのですね。つまり障害者問題に対するスタンスが違っているのです。精神障害者の捉え方も全然違うと思ったのですが、スタンスが違う。われわれは、日本では、障害者の障害の「部位」が問題ですが、イギリスでは、むしろ不利な立場にある人が問題になっていて、それを「障害者」と、みんな言っているわけではなくて、もちろんいろいろなことがあるんですけれども、障害者の概念をそう捉えているということです。
1.イギリス視察
 ■ ブロムリーバイボウセンター
 ■ グリーンワークス&ファーストフルーツ
 ■ コイン・ストリート・コミュニティー・ビルダーズ
 ■ ソーシャル・ファームUK
2.イタリア視察
 ■ バーチャル・コープ
 ■ ピアッツア・グランデ
 ■ コーパップス
 ■ バンカ・ポポラーレ・エティカ
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