トップページ > 設立趣旨・目的
設立趣旨・目的

基本的人権の尊重は、国民の権利の中軸をなすものであり、近代的な民主主義国家の存立の基盤である。
しかしながら、昭和40年の国の同和対策審議会答申に指摘されているとおり、同和地区住民は、「なおいちじるしく基本的人権を侵害され、とくに、近代社会の原理として何人にも保障されている市民的権利と自由を完全に保障されていないという」状態におかれている。
すなわち、同和問題は、基本的人権にかかわる重大な問題であり、その解決は、国をはじめとする行政の責務であるとともに、われわれ一人ひとりがその解決に向けて努力すべき「国民的課題」である。
同和対策審議会答申は、「同和地区住民に就職と教育の機会均等を完全に保障する」ことが「同和問題解決の中心的課題である」と明示している。
従って、同和問題解決のためには、関係行政機関はもとより、企業とりわけ近代的な主要産業といわれる大企業・中堅企業が同和問題の正しい理解、認識を通して、具体的に同和地区住民の雇用をはかり、就職の機会均等を保障していくことが必要不可欠である。
このため、従来から、労働行政をはじめ関係行政機関においては、それぞれの法令制度等に基づき、民間雇用をはじめ現業職を中心とする公共部門への就職等、種々の雇用促進がはかられ、さらに、各種貸付制度等の就職援護措置をはじめ、職業訓練等による同和地区住民の職業的資質の向上に努めるなどの諸対策を講じつつ、巡回職業相談による職業指導、職業紹介をきめ細く実施するとともに、企業内同和問題研修推進員の設置をはじめ、企業に対する啓発活動の推進が実施されてきた。
しかしながら、大阪府をはじめ関係行政機関において数次にわたって実施された府下同和地区の労働実態調査の結果をみても、今なお府下同和地区の失業率はかなりの高率を示しており不安定就業と失業の循環という極めて低位な就業の状態にある。
このように、同和地区住民の安定的な雇用の確保がみられないのは、第一に、同和地区住民側には、永年にわたる部落差別の結果、教育の機会均等やそれを保障する安定した生活条件が阻害され、教育水準、職業能力、技術水準等の低位性を招来し、そのため、とりわけ中高年令者を中心として不安定な就労状態から抜け出せない状態にある。
第二に、企業側においては「部落地名総鑑事件」にみられるごとく、就職にあたっての差別による排除がなお根強いこと、また、終身雇用慣行のもとで、中途採用のケースが少く、したがって、採用が若年層に片寄るとともに、新規採用時点では、学力のみに重点をおく傾向から同和地区住民には結果として、極めて狭隘な労働市場となっている。
第三に、行政側においては、現行の労働施策が前記の実態に十分対応しきれていない側面があることから、不安定就業の実態の解消にいたっていない。
こうした現状を打開するため、現在、国、府をはじめとする関係行政機関において推進されている雇用促進のための施策が強化されることはもとより、これらの施策を補完するものとして、大企業、中堅企業の計画採用のなかに同和地区住民が円滑に受け入られるための方途を講ずることが重要である。
そのため求人側には、従来の雇用慣行にとらわれず、その実態を考慮した雇用の場の提供と、住民の資質向上への適切な助言、また一方求職側には、職業人としての自覚とその資質の向上及び職業能力開発のための教育訓練に参加し、自主的な努力を図ることにより、「求める側の人材と求められる側の能力の適切な結びつけ」を計画目標にもとずき推進する方途として、大阪府、大阪市、市町村をはじめとする行政機関、企業及び住民の三者が一体となり、同和地区住民の安定的な雇用の確保という共通目的を達成するため、英知を結集し、その具体化をめざす場として、第3セクター方式による社団法人同和地区人材雇用開発センターを設立する次第である。
1981年7月3日
社団法人同和地区人材雇用開発センター設立総会